「ハムネット」のあらすじ・感想(ネタバレあり)
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渋谷ロフトの向かいにあるシネクイントという、座席数162席の小さな映画館。
大きなスクリーンもいいけど、このくらいの小さめな空間。没入感があって、好きなんですよね。
先月から公開されている「ハムネット」。平日の午前、お昼時ということでお客さんもまばらで、なんと快適なのでしょうか——静かにゆったり観られます。
ホール自体がとても小さいので、自分の部屋のシアタールームで観ているような(シアタールームはないんですけどね)そんな気分でした。
スクリーンを独り占めしているような気分、とでも言えばいいでしょうか。
あらすじ
森の中の木の根の間にうずくまる女性のシーンから始まるこの映画。
主人公はかの有名なシェイクスピアの妻、アグネスです。アグネスとウィリアム、そしてその子供たちの家族の物語。
シェイクスピアというと「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「ベニスの商人」など、有名な戯曲のイメージしかなかったのですが、なかなか苦労していたんですね。
今回の主人公は妻。
この映画は妻のアグネスの視点で描かれています。
「ハムネット」感想(ネタバレ含む)
息子のハムネットが亡くなるシーンは、本当につらかったです。私も母親なので、アグネスの叫びが心に刺さりました。
そう……今なら治る病気でも、昔はあっさり人の命を奪って行った。
アグネスの「あなたはいなかった」という言葉が、繰り返し繰り返し出てきます。夫は仕事で家にいなかった。大事な時に、あなたはいなかった。
その「いなかった」ということが、アグネスにとってはすべてなのです。だからアグネスはウィリアムを拒絶し、「あなたなしで生きていく」と言います。
そこから生まれたのが、あの「ハムレット」という作品だというのがこの映画のストーリーなのですが、アグネスは最初、そのタイトルを見てめちゃめちゃ怒っています。
「私の息子の名前を勝手に使った」と言って。でも、お芝居を見た後、最後はアグネスが清々しい笑顔になっているのです。
夫も自分と同じように息子の死で苦しんだということを、芝居を通して理解できたのでしょう。「ハムレット」がなかったら、ふたりはすれちがったままだったかもしれないですね。
夫の悲しみを知り、アグネスも、その死をようやく受け入れられたのではないかと思います。
この笑顔に、ほんとに救われた。私も清々しい気持ちになれた。
とにかくすごい作品でした。
16世紀の暮らし。ろうそくしかない薄暗い家の中、衣装や家具、人々の営み。
そうした細部もとても興味深かったです。
映画が終わって、渋谷の街に出ました。あ、現実世界に戻ってきたという感じ。それくらい、あの深い森に引き込まれていました。
冒頭から画面に映し出されるあの森は、アグネスのアイデンティティそのものです。彼女はどこまでも、森の女なのです。
私はわりと、エンドロールが終わりかけのタイミングで席を立ってしまうことがあります。でも昨日は最後まで座っていました。それだけで、この映画が何者であるかが、わかる気がします。
映画を観た後に「どこが良かった」「どう感じた」と人と話すのも好きですが、これだけ心に迫る作品は、一度は一人で観たいと思います。一人でこの世界を堪能したい。そのためには、このくらいの小さな劇場が最適だったなと思いました。
ひとり映画、最高でした。
原作も、読んでみたくなりました。