本があってよかった。
1度でもそんな風に思ったことのある人なら、この小説の面白さがわかると思います。
面白い、というのはちょっと違うかな。
本がいかに人生を豊かに、楽しく、実りのあるものにしてくれるか。それを実感できると思います。
短編集ですが、私は表題作の「さがしもの」が好きです。
ちょっと口の悪いおばあちゃん。入院していて、もう先が長くない。
そんな状態で孫に本探しを頼みます。タイトルと著者名をメモしたものの、どんなに探してもその本が見つからない。
病院に顔を出すたびに、今日も見つからなかったということがわかると明らかに落胆するおばあちゃん。
も
う絶版になっている、というところまではわかったものの、古本屋を巡っても出てこない。そうこうしているうちにおばあちゃんは天国へ。
なぜおばあちゃんはあの本にこだわったのか。
なぜ読みたかったのか。
その理由がわかった時に、憎まれ口ばかり叩いているおばあちゃんだけど、その本当の姿が垣間見えたような気がしました。
ふふ。私も死んだら化けて出るかな。孫のところに。
本にまつわるエピソードを中心とした短編集は、本が好きでたまらない私には、ほっとできる作品でした。
大きく心が揺さぶられる感動、というのではなくて、しみじみと本の素晴らしさというものを実感できる小説です。
本があってよかった。
何度もそう思いました。
本との出会いは人との出会いと似ている
何かしらの「縁」があって出会うわけだけど、その「縁」をどうやって自分のプラスにするのか、自分の財産にするのかは、自分次第。
どんな本でも、何かしらそこから読み取れるもの、自分のプラスに出来るものがあると思うのだけど、自分の器量が小さくなっている時はそれが出来ないんだよなあ。
これからもたくさんの本に出会って、自分の世界を広げたい。
この作品は、多分何度読み返しても、その都度違う感想を持てる、本当に本への愛情が溢れた本。
こんな本を、たくさんの人に届けたいな。